ESSヨットクラブ



最初の一歩 1

1、ヨットはセイルに風を流して走る

ヨットはセイルに風を流して走ります。実はヨットは揚力によって走るのですが、このこの揚力とは何なのでしょうか。左のイラストは飛行機の翼の断面を絵にしたものです。飛行機がジェットの推進力で前方へすすむと、翼の両側の空気の流れは矢印のようになります。翼の上側を流れる空気は曲面にそって流れますから、下側の平面を流れる空気よりも長い距離を流れています。したがって、上側の方が下側よりも空気が早く流れているわけで、この流れの速度差によって圧力差が生じ、下から上へと引きあげるような力が生じるのです。ヨットも、この揚力を利用して走ります。ヨットの走っているところを真上から見ると、セイルの形が飛行機の翼に似ていることがよくわかります。
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2、揚力を生かす

ヨットの場合、揚力がそのままであれば、斜め前方に進むことになりますが、この揚力のうち横方向に働く力を水中にあるセンターボードの働きによって打ち消すので、前方へ働く力だけが残り、それが推進力となるのです。つまりヨットにおいては、セイルの表と裏に風を流して走る事が重要になるのです。(実際にはイラストよりセイルを閉じた状態でセイリングします。) 
また二枚帆のヨットの場合、メインセイルの前にジブセイルがありますがこのジブセイルは、それ自体も揚力を発生させますが、メインセイルの裏側にながれる風をより早く流すという役目もしています。


3、走り方の種類

3−1 クローズホールド 
ヨットが風上に向かって走ることができる限界の角度でセイリングしている状態。クルーはジブセールを固定し、強風の時はトラッピーズにでる。
3−2 アビーム 
真の風に対して90度、真横から風を受けて走るセイリング。目標物を定めて走るので、クルーは風のふれに合わせてジブセイルをトリムする。クルーはスピンをはってトラッピーズに出ることもある。
3−3 ランニング 
後ろから風を受けてセイルが風に押されて走る状態になるセイリング。風軸に対して5〜10度の角度をつけてはしる。 
クルーはスピントリムに集中する。 

※クローズリーチからブロードリーチまでをリーチングといい、クローズホールド以外のすべての走りをフリーという。

 ヨットにおける方向転換(ラフ、ベア、タック、ジャイブ)
ヨットの走りかたには、どちらの舷から風を受けているかによって、「スタボータック」と「ポートタック」の二つの種類があります。しかしこの場合の「タック」は帆走状態を指し、ここでふれる方向転換としての「タック」とは違います。タッキングはタックをかえる方法なのでそのように呼ばれるのですが、ジャイブと呼ばれる方向転換をした時にも、タックが変わることに注意しましょう。

1、ラフィング

タックを変えずに風上に切りあがることをラフ(ラフィング)という。ランニングから、クローズホールドまで大きく切れ上がることも、ほんのちょっと風上に進行方向を変えるだけでもラフィングである。タックを変えない限り、風位にたって船が止まってしまっても、その時点まではラフィングとみなされる。 
船をラフィングさせるにはセイルをよりひき込み、ティラーを風下側に押す。スピードを殺さずにラフできるように、船が方向をかえるのに合わせて(受ける風の変化に合わせて)セイルを出し入れすることが重要。
ラフィング ベアリング

2、ベアリング

タックを変えずに、つまりジャイブをせずに風下に方向を変えることをベアリングという。クローズホールドから次第に風下に落とし、ジャイブする直前のランニングの状態になるまでがベアの範囲である。 
船をベアさせるには、セイルをゆるめ、ティラーを風上側にひく。この場合もラフの時と同様に風に合わせてセイルを出し入れしなければならない。(ジブも同様)


3、タッキング

タッキングとは、クローズで帆走中に行う方向転換のこと。 
(ちなみに後ろから風をを受けて走る時に行う方向転換をジャイビングという) 

ヨットは風に対して45度以上までは上ることができる(クローズホールド)が、真っ直ぐ風上に向かっては走れない(デッドゾーン)。そこで、タッキングという方向転換(左図参照)を行いながら、ジグザグに風上に上っていく。タッキングでは、船が風上に向かう瞬間、つまりセイルが風にはらまない瞬間があり、どうしてもスピードが落ちる。このスピードロスを極力防ぐことがタッキングの課題でもある。 

そのためには、艇がスムーズにまわれるように動けばいいわけのだが、風の強さによって行う動作も異なってくることから、俗に微風から順風までの際ににおこなうタックをロールタック、順風から強風までの際に行うタックをトラトラタックと呼ぶ。


3aタッキングにおける基本動作(順風時)

まず、タックの合図と共にスキッパーが舵を切り始める。船が風軸をこえる前に、やや2人とも最初に座っていた位置よりも後方に座るようにしながら、船にヒールをつけ、船を風上にむけてのぼす。(後ろにするように座るのは、その方がCLRが後ろにきて、ウエザーヘルムを生じてバウ(船首部分)が早くまわるからである)ここまでが、左の図の一番下の船の段階。 

次に、船が風位をこえるとセイルが反対側にかえる。クルーはジブがマストをなでる直前までにそれまでのジブシートをリリースし、ジブのクリートをカット、ハンドルに手をかけて、艇に体重を思いっきりかけ、船を風下側にふる。(艇が傾いた方が艇がまわりやすい)その間、ジブシートを引き込み、ジブセールを張る。ここまでが左図の真ん中船の段階。 

そして船の反対側に移動、上体を横にスライドさせるようにしながら反対舷に移ると同時に体で新しいタックのジブシートをもつ。風がやや強風であれば、ジブシートをひきながらももう一方の手でトラッピーズに手をかけ、そのままハイクアウト、もしくはトラッピーズにでて、艇のバランスをとる。ここまでが左図の一番上の船の段階。 

スキッパーはブームをくぐったら、艇のバランスを取りながら体重を移動させる。ティラーは体から放さないようにする。(そうしないと舵を切りすぎたり、体重移動がうまくいかなかったりする。)その後すぐにティラーを持ち替えて、反対の手に持ったまますわる。艇のバランスを取ることが最優先で、スピードが回復しないうちにティラーを持ちかえようと焦るとスピードロスにつながりやすい。 

最後にルール上の注意点を挙げておく。「タック中の船は他の船を避けなければならない」とされているが、ルール上でのタッキングとはヨットが風位を越え、次のタックのクローズホールドでセイルが風にはらむまでの間を指す。船がラフをはじめ、風位にたってセイルがシバーするまでの間はタックではなくてあくまでラフィングである。 

 


3bロールタック(微風時におけるタック)

微風の時初めクルーは風下側に腰掛けている。(スキッパーと違う側。@。)少しヒールをつけ、船を傾け、船を風上に上りやすくしておく。 

しかし、Aの段階で、艇が風上に向かうのと同時に徐々に風上側に移動していく。そして船が風にたつ瞬間(ジブがマストにふれる時)、ジブのクリートをカットし、思いっきりハンドルに手をかけて船に体重をかけ、船をふる。そしてふりながらジブシートをひいてジブセイルを張りかえる。 

Bにおいても船が十分スピードにのるまで、傾いた状態を維持する。 

ポイント 
1、最初はどちらにふればいいのか わからなくなるが、スキッパーのいる側にふれば良い。 
2、恐れずに、水につかるぐらいの気持ちで船を傾けた方が良い。 
3、ジブセールの動きを見ながら移動すると良い。 
 

 


3cトラトラタック(強風時におけるタック)

@において、トラッピーズに出ている時に「タックするよ」といわれたら、トラッピーズリングを外して、腕でハンドルをつかんで、トラッピーズの姿勢を保つ。 

Aにおいて、船が風にたったら、即ジブシートのクリートが外せるように、反対側に移動する。その際、ジブセールのはりかえも手早くできるように、(この図では右側にある)ジブシートを手に持って反対側に移動すると良い。ジブのクリートを切ったらその手でハンドルを持ちにいって、その反対の手でジブシートをひきながら、急いでトラッピーズに 
でる(そうしないとすぐに船が沈(転覆のこと)するので)。 

Bトラッピーズにでたらすばやくリングをかけて、ひき足りなかった分のジブシートを最後までひく。


つづく